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退職

退職後の健康保険はどうすべき?切り替えの全手順とお得になる選び方

「退職後の健康保険はどうしたら良い?」「任意継続と国民健康保険はどっちが得?」など、退職後の健康保険が気になっていませんか?

退職後の健康保険は、選び間違えると、年間で10万円以上損をしたり、デメリットが大きいので注意しましょう。

このページでは、転職エージェントとして1,000人以上の退職をサポートし、自らも4回の退職経験を持つ筆者が、退職後の健康保険について、以下の流れで解説します。

全てを読めば、退職後に健康保険はどれを選び、具体的に何をすべきかまでがわかり、損することなく、スムーズに退職手続きができるでしょう。

著者:I.J(現役転職エージェント)
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ij
30代の現役転職エージェントで、当サイトの発起人。

新卒で大手エージェントに入社。求職者向けのキャリアアドバイザーを経験後、法人担当(採用企業側の担当)も経験する。

累計3,000名以上の求職者をサポートしてきた経験を活かし、他社勤務も経て、現在は大手エージェントの、求職者のサポート部門でマネージャーを行う。

匿名だからこそ発信できる業界の裏事情など「綺麗事では語れない、転職する人に真に価値のある情報を」という思いでこのサイトを立ち上げた。

1. 退職後の健康保険はどうすべき?

退職すると、その会社の保険証は使えなくなり、退職の翌日から以下のいずれかに入る必要があります。

退職後の健康保険 対象
①次の会社で健康保険に入る 退職の翌日に転職する人
②家族の扶養に入る(家族の勤める会社の保険証を使う) 1日でも無職の期間がある人・無職やフリーランスになる人
③任意継続する(現在の保険証を最長2年まで延長して使う)
④国民健康保険に入る(役所で保険証を作る)

退職後の進路によって、取るべき手段が変わります。

すぐに転職するなら次の会社の健康保険に入るだけ

「3月31日退職→4月1日入社」のように、退職の翌日に転職する場合は、次の会社の健康保険に入ります。

手続きとしては、退職する会社に保険証を返却し、転職先で新しい保険証を受け取るだけです。

新しい保険証は、入社から1~3週間で会社から受け取れます。

すぐ転職しないなら、3つから選ぶ必要あり

「3月15日退職→3月20日入社」のように、1日でも無職の期間がある方や、無職・フリーランスになる方は、以下いずれかの手続きが必要です。

  • 家族の扶養に入る:家族が働く会社の保険証をもらう
  • 任意継続に加入:退職した会社の保険証を最大2年まで使える
  • 国民健康保険に加入:住所地の役所で保険証をもらう

3つの中から、保険料が安くなる方法を選びましょう。

できる人は「家族の扶養に入る」がベスト

以下全てに当てはまる方は、家族の扶養に入るのが一番お得です。

  • 配偶者や親、子など家族がフルタイムで働いている
  • あなたの退職後の見込み年収が130万円以下
  • あなたの退職後の見込み年収が、働いている家族の半分以下

自分の保険料が掛からなくなり、家族の勤める会社の保険証が使えるようになります。

手続きとしては、家族が、勤める会社の健康保険組合に、あなたを扶養に入れる申請をする流れとなります。

ネットで「保険者名、扶養」で検索すると、以下のような必要書類のダウンロードが可能で、細かい条件も確認ができます。(保険者名は保険証に記載)

健康保険被扶養者異動届

引用:三菱健康保険組合

やること 家族が、あなたを自分の健康保険に加入させる
やる場所 家族の勤める会社の人事部など、健康保険の窓口
期限 退職の翌日から5日以内
必要なもの ・健康保険被扶養者異動届
・退職証明書
※健康保険組合によって異なるので、公式ページを要確認。

その他の方は、任意継続・国民健康保険の安い方を選ぶ

その他の方は、任意継続か国民健康保険どちらか保険料が安い方を選ぶ必要があります。

任意継続と国民健康保険

どちらが安いかは、収入や家族の有無によって変わるので、一概には言えません。

次から、どちらが安くなるかの基準や、確認方法を解説していきます。

2. 任意継続と国民健康保険はどっちが得?

あくまで傾向ですが、以下を基準に選ぶと、保険料が安くなりやすいです。

任意継続の方が安い ・直近の年収が400万円以上
・配偶者や子供など、同じ保険証を持つ家族がいる
・退職後に年収が上がる
国民健康保険の方が安い ・直近の年収が400万円以下
・退職後に年収が下がる

どちらを選ぶかで、年間の保険料に10万円以上差がつくこともあるので注意しましょう。

この基準の背景となった、2つの違いをまとめると以下の通りです。

任意継続 国民健康保険
期間 最大2年間 ずっと使える
保険料が決まる基準 退職時の給料や年齢 前年の所得や年齢
一人が家族の分も払う「扶養」の仕組み
一人が払えば家族も同じ保険証を使える
×
家族がそれぞれ保険料を払う
保険料が安くなる「軽減」の仕組み ×
2年間保険料は変わらない

年収150万円以下の場合、2~7割の軽減あり

それぞれ、選ぶべき人の条件を解説していきます。

任意継続の方がお得になる条件

前職で2ヶ月以上勤めた方だと、任意継続に加入して、同じ保険証を、退職後も最大2年まで使うことができます。

以下に当てはまる方は、任意継続の方が安くなりやすいです。

  • 直近の年収が400万円以上
    →任意継続の保険料は上限があり、年収400万円までの場合で計算されることが多い。
  • 配偶者や子供など、同じ保険証を使う扶養家族がいる
    →あなた一人が保険料を払えば、家族の分は無料になる
  • 退職後に年収が上がる
    →2年間は退職時の収入を基準にした保険料で変わらない

任意継続の保険料には上限があり、月35,000円までに収まることが多いです。

年収400万円以上で国民健康保険に入ると、保険料がそれを超えてくるので、任意継続を使った方がいいでしょう。

また、国民健康保険にはない「扶養」の仕組みがあり、家族の保険料が掛からなくなるので、家族がいるなら任意継続がおすすめです。

任意継続の手続き方法

必要書類に記入して、健康保険組合に郵送すると、保険証を自宅まで送ってもらえます。

ネットで「保険者名、任意継続」で検索すると、公式サイトから以下のような申請書がダウンロードできます。(保険者名は保険証に記載)

健康保険任意継続被保険者資格取得申請書

引用:三菱健康保険組合

やること 任意継続保険の加入手続き
やる場所 加入していた健康保険組合の事務所
※郵送も可
期限 退職の翌日から20日以内
必要なもの 健康保険任意継続被保険者資格取得申請書

国民健康保険の方がお得になる条件

以下に当てはまる方は、国民健康保険の方が安くなりやすいです。

  • 直近の年収が400万円以下
  • 退職後に年収が下がる

大体ですが、年収400万円下回ると、保険料が安くなりやすいので、国民健康保険がおすすめです。

また、年収150万円を下回ると、保険料が2~7割減額になる「軽減」の仕組みがあるので、完全に無職になる方にも向いています。

国民健康保険の手続き方法

国民健康保険に入る場合は、住所のある役所で、加入の手続きが必要です。

手続きは、本人だけでなく、配偶者など同一世帯の方でも可能です。

その他の方に代理で手続きを頼みたい方は、「住んでいる市区町村名、国保」で検索すると、公式ページが出て、委任状がダウンロードできるので、活用しましょう。

やること 国民健康保険の加入手続き
やる場所 役所の国保年金課
期限 退職の翌日から14日以内
必要なもの ・退職日のわかる書類(健康保険の資格喪失証明書、退職証明書)
・本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなど)

どちらが安いかのシミュレーション

以下3つのケースで、具体的にそれぞれ保険料がいくらになるかを紹介していきます。

  • 年収300万円の独身
  • 年収500万円の独身
  • 年収400万円で配偶者・子供あり

年収300万円の独身の場合:国民健康保険が安い

独身で、直近の年収が300万円の方は、国民健康保険の方が安くなります。

年間の保険料
~39歳・66歳以上 40~65歳
任意継続 311,367円
(月25,948円)
361,296円
(月30,108円)
国民健康保険 248,200円
(月20,683円)
299,000円
(月24,916円)

300万円を下回る場合も、このように国民健康保険が安くなるのは変わりません。

年収500万円の独身の場合:任意継続が安い

独身で、直近の年収が500万円の方は、任意継続の方が安くなります。

年間の保険料
~39歳・66歳以上 40~65歳
任意継続 359,280円
(月29,940円)
416,880円
(月34,740円)
国民健康保険 425,100円
(月35,425円)
509,200円
(月42,433円)

任意継続の保険料は上限があり、月収が30万円までの場合の計算になり、このように安くなります。

ただ、保険料の元となる月収の上限は、以下のように健康保険組合によって変わります。

これらの上限だと、収入に応じてさらに保険料が上がり、国保の方が安くなります。

直近の月収が30万円を超える方は、念の為、入っている健康保険組合に任意継続の保険料を確認しておきましょう。

年収400万円で配偶者・子供ありの場合:任意継続が安い

配偶者や子供がいる3人家族で、年収が400万円の場合は、任意継続の方が安くなります。

年間の保険料
~39歳・66歳以上 40~65歳
任意継続 359,280円
(月29,940円)
416,880円
(月34,740円)
国民健康保険 431,600円
(月35,966円)
514,900円
(月42,908円)

任意継続は、一人が払えば家族も保険証を使える「扶養」の仕組みがあり、保険料が抑えられます。

同居する家族がいる方には、任意継続がおすすめです。

それぞれに電話確認するのが確実

これまでどちらが安いかを解説してきましたが、細かい金額は、健康保険組合のルールによっても変わり、一概には言えません。

具体的に確認したい方は、以下ぞれぞれに電話して、直近の収入や家族構成を伝えれば概算を教えてもらえます。

  • 任意継続の保険料:健康保険組合(保険証の保険者の欄に記載あり)の窓口
  • 国民健康保険の保険料:住所のある役所の、国民健康保険の窓口

3. 退職後の健康保険についてよくある質問

これまで解説した以外で、退職後の健康保険についてよくある以下の質問に回答していきます。

  • 退職後に保険料が払えない場合どうしたらいい?
  • 加入の手続き期限を過ぎてしまったら?
  • 退職後に健康保険に入らないとどうなる?

Q1. 退職後に保険料が払えない場合どうしたらいい?

任意継続の場合は、払わないとすぐ使えなくなるので、国民健康保険に加入しましょう。

国民健康保険の場合は、まず役所の専用窓口に、払えないことの相談に行きましょう。

会社の倒産や解雇で収入が大きく減った場合など、状況によっては減額してもらえたり、支払いを猶予してもらえるケースがあります。

放っておいて滞納額が貯まると、保険証が使えないだけでなく、延滞金がかかったり、財産の差し押さえを受ける場合もあります。

Q2. 加入の手続き期限を過ぎてしまったら?

健康保険ごとに、手続きの期限や、過ぎた場合の対処法をまとめると以下の通りです。

健康保険
(手続き期限)
手続き期限を過ぎたらどうする?
家族の扶養に入る
(退職翌日から5日以内)
過ぎても加入はできますが、退職の翌日から扶養に入ることはできなくなり、申請が受理された日からの扶養となります。
事情によっては、遅れても退職の翌日から加入させてくれる場合もあるので、一度健康保険組合に相談してみましょう。
任意継続
(退職翌日から20日以内)
期限を過ぎた場合、加入は受け付けてもらえないので、国民健康保険への加入を行いましょう。
国民健康保険
(退職翌日から14日以内)
過ぎても加入の手続きはできますが、退職日以降の保険料は、さかのぼって一気に請求されます。
また、手続きをしていない期間の病院代は、全額自己負担(通常の約3倍)となります。

Q3. 退職後に健康保険に入らないとどうなる?

医療費が本来の3割から10割負担になり、病院での会計時に、通常の三倍以上の額がかかるようになります。

また、日本では、国民皆保険制度で「必ず何らかの健康保険に入るべき」というルールがあり、入らないことは認められていません。

税金の支払いと同じイメージで、加入しないと、役所から保険料の督促状が届くようになり、無視すると財産を差し押さえられることもあります。

良いことは一つもないので、必ずこのページを参考に何らかの健康保険に加入しておきましょう。

4. 健康保険以外で、退職後にすべき5つの手続き

次に、健康保険以外で、退職後にすべき以下の公的手続きを紹介していきます。

退職後にすべき手続き 対象 やるべき時期
1.年金の切り替え 退職の翌日・同じ月内に転職 手続きなし
上記以外
(役所で国民年金に加入)
退職翌日から14日以内
2.雇用保険の手続き すぐに転職する 手続きなし
失業保険をもらう 退職から2週間後、離職票が届いたら
3.住民税の手続き 1ヶ月以内に転職
(転職先に給与所得者異動届出書を提出)
転職時
上記以外
(自分で住民税の支払い)
役所から納付書が届いたら
4.所得税の手続き 退職した年内に転職
(転職先に源泉徴収票を提出)
転職時
上記以外
(自分で確定申告)
退職の翌年の2~3月
5.確定拠出年金の手続き
※加入中の方のみ
転職先に確定拠出年金あり 手続きなし
上記以外
(iDeCoに申し込み)
退職の翌月から6ヶ月以内

同じ項目でも、退職時期や転職の有無によって、やるべき内容は変わります。

それぞれ、状況別にやるべきことを解説していきます。

その他退職後にやる事① 年金の切り替え

退職すると、勤めていた会社の厚生年金は切替が必要になります。

手続きを忘れると、将来もらえる年金額が減ったり、支給されなくなる場合もあるので注意しましょう。

やるべきことは、以下どちらかで変わります。

  1. 退職の翌日や、同じ月内に転職する
  2. 月をまたいで転職する、無職・フリーランスになる

ケース1. 退職の翌日や、同じ月内に転職する

退職の翌日に転職したり、「3月15日退職→3月20日入社」のように退職した月内に転職する方は、特別手続きは必要ありません。

転職先の会社に、基礎年金番号かマイナンバーを伝えるだけで、現在の厚生年金が引き継がれます。

やること 転職先に、基礎年金番号、もしくはマイナンバーを伝える
やる場所 転職先の会社
期限 転職後すみやかに
必要なもの 以下いずれか一つ
・基礎年金番号のわかるもの(年金手帳か基礎年金番号通知書)
・マイナンバーのわかるもの(マイナンバーカードかマイナンバーの通知書)

ケース2. 月をまたいで転職する、無職・フリーランスになる

「3月15日退職→4月1日入社」のように月をまたぐ転職や、無職・フリーランスになる方は、国民年金に切り替えが必要です。

住所のある役所で、退職から2週間以内に手続きをしましょう。

やること 国民年金に加入する
やる場所 役所の国保年金課
期限 退職日の翌日~14日以内
必要なもの ・年金手帳、または基礎年金番号通知書
・退職日のわかる書類(健康保険の資格喪失証明書、退職証明書)
・本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなど)
手続きの期限(14日)を過ぎてしまったら?

年金事務所から保険料の納付をするよう「催告状」が届いたり、電話で案内が来るはずなので、それに従いましょう。

国民年金の保険料は、期限から2年までなら、さかのぼって納付ができるので、すぐに対応すれば問題ありません。

その他退職後にやる事② 雇用保険の手続き

退職すると、雇用保険の切り替えや、失業保険の申請が必要になります。

手続きを忘れると、退職後にもらえるはずの数十万円を失う場合もあるので、注意しましょう。

やるべきことは、以下どちらかで変わります。

  1. すぐに転職する
  2. 無職になり、失業保険を受け取りたい

ケース1. すぐに転職する

退職後、すぐに転職する方は、特別手続きは必要ありません。

退職前の会社から以下の雇用保険被保険者証を受け取り、それを転職先に提出するだけで済みます。

雇用保険被保険者証

引用:ハローワークインターネットサービス

雇用保険被保険者証は、退職後に源泉徴収票などと一緒に、本人宛に郵送されることが多いです。

やること 転職先の会社に雇用保険被保険者証を渡す
やる場所 会社
期限 転職後すみやかに
手続きに必要なもの 雇用保険被保険者証

ケース2. 無職になり、失業保険を受け取りたい

転職先が決まっておらず、以下に当てはまる方は、失業保険の申請ができます。

  • 失業状態(就職の意思はあるが、職が決まらない)
  • 過去2年間で、12ヶ月以上雇用保険に入って働いていた

失業保険は、再就職を支援する給付金で、前職の給料の5~8割の金額を、3~5ヶ月間もらうことができます。

申請には以下の「離職票」が必要になるので、受給したい方は、退職前に会社に発行を依頼しておきましょう。

離職票

引用:ハローワークインターネットサービス

やること 失業保険の申請
やる場所 住所地の管轄のハローワーク(所在地一覧
期限 退職日から1年以内
手続きに必要なもの ・離職票(退職した会社から、退職後1ヶ月以内に郵送されることが多い)
・マイナンバーがわかるもの(マイナンバーカード、通知カード、番号記載の住民票)
・本人確認書類(免許証やマイナンバーカード)
・縦3cm×横2.4cmの証明写真2枚
・本人名義の通帳又はキャッシュカード

申請から受け取りまでの流れ

失業保険の申請から受け取りの流れは以下の通りです。

  1. 退職
    ↓約10日後
  2. 会社から離職票受け取り
  3. ハローワークで申し込み
  4. 7日間の待機期間(自己都合退職ならさらに2~3ヶ月の給付制限)
  5. ハローワークの雇用保険説明会に参加
  6. ハローワークに失業認定申告書を提出
    ↓約1週間後
  7. 失業手当の振込

その後「❻ ハローワークに失業認定申告書を提出」→「❼ 失業手当の振込」を一ヶ月ごとに繰り返していきます。

失業手当は、倒産や解雇が理由の会社都合の退職だと約1ヶ月でもらえますが、自己都合退職だと、もらえるまでに約3ヶ月かかります。

そのため、退職後3ヶ月無収入でやっていける貯金がない方は、受給が難しいので注意しましょう。

※もらえる金額の目安は、dodaの「【シミュレーション】失業手当(失業保険)の給付額はいくら?計算方法は?」で計算できます。

その他退職後にやる事③ 住民税の手続き

退職すると、その会社の給与から住民税の天引きができなくなります。

そのため、天引きする会社の切り替えや、自分での支払い手続きが必要になります。

手続きを忘れると、税金が未納なり、ペナルティで税金を多く取られることもあるので注意しましょう。

やるべきことは、以下どちらかで変わります。

  1. 退職から1ヶ月以内に転職する
  2. 1ヶ月以上の無職の期間がある、フリーランスになる

ケース1. 退職から1ヶ月以内に転職する

退職後、すぐに転職される方は、住民税の天引きをそのまま次の会社で受けることができます。

やることは簡単で、以下の「給与所得者異動届出書」を退職する会社に用意してもらい、それを転職先に提出すれば終わりです。

給与所得者異動届出書

引用:中央区公式ページ

退職の翌月10日までという期限があるので、退職する会社に、早めに用意を頼んでおきましょう。

やること 退職前の会社に「給与所得者異動届出書」を書いてもらい、それを転職先に提出
やる場所 会社
期限 退職の翌月10日まで
手続きに必要なもの 給与所得者異動届出書(退職する会社が用意してくれる)

ケース2. 1ヶ月以上の無職の期間がある、フリーランスになる

1ヶ月以上無職の期間があったり、フリーランスになる方は、退職後の住民税は自分で支払いが必要になります。

やること自体は変わりませんが、以下どちらになるかで、支払いのタイミングが変わります。

  • 1~5月に退職
  • 6~12月に退職

1~5月に退職する場合

1~5月に退職した場合の住民税

1~5月の退職の場合、5月分までの住民税は、最後の給与から一気に天引きされます。

そして6月分から、役所から届く納付書を使って、自分で支払いが必要になります。

やること 住民税の支払い
やる場所 最寄りの金融機関やコンビニ
期限 納付書に書かれた期日まで(6月、8月、10月、翌年1月の末)
手続きに必要なもの 住民税の納付書(6月に役所から届く)

6~12月に退職する場合

6~12月に退職した場合の住民税

6~12月の退職の場合、退職の翌月以降の住民税は、自分で支払いが必要になります。

退職後まもなく、役所から納付書が届くので、期限までに支払いましょう。

やること 住民税の支払い
やる場所 最寄りの金融機関やコンビニ
期限 納付書に書かれた期日まで
手続きに必要なもの 住民税の納付書(退職からまもなく役所から届く)

その他退職後にやる事④ 所得税の手続き

退職すると、その会社の給与から所得税の天引きができなくなります。

そのため、天引きする会社の切り替えや、確定申告の手続きが必要になります。

手続きを忘れると、税金が未納なり、ペナルティで税金を多く取られることもあるので注意しましょう。

やるべきことは、以下どちらかで変わります。

  1. 退職と同じ年に転職する
  2. 退職した年に転職しない、無職・フリーランスになる

ケース1. 退職と同じ年に転職する

退職したのと同じ年に転職する場合は、引き続き転職先で所得税の天引きをしてくれます。

やることは、退職した会社から以下の「源泉徴収票」を受け取り、それを転職先に渡すだけです。

源泉徴収票

引用:国税庁公式

ただ、年内の転職でも、11~12月の転職先の年末調整に間に合わなかった方は、次から紹介する確定申告の手続きが必要です。

※年末調整:会社が年間に天引きした所得税を、厳密に計算し直して、過不足を調整する手続き。

やること 前職の源泉徴収票を転職先に提出
やる場所 転職先の会社
期限 退職した年内
手続きに必要なもの 源泉徴収票(退職した会社から退職後1ヶ月ほどで郵送される)

ケース2. 退職した年に転職しない、無職・フリーランスになる

退職した年内に転職しない方や、無職・フリーランスになる方は、自分で確定申告の手続きが必要です。

確定申告とは、1~12月までにいくら稼いだのかを税務署に報告し、所得税を計算して、納税までを行う手続きです。

国税庁の専用ページから、収入や控除の金額を入れて自宅で手続きができます。

確定申告書作成センター

引用:国税庁「確定申告書等作成コーナー

マイナンバーカードがあると、ネットでデータを送信できて楽なので、まだ持っていない人は作っておきましょう。

やること 確定申告
やる場所 自宅、もしくは税務署
期限 退職の翌年の2/16~3/15の間
手続きに必要なもの ・退職した会社の源泉徴収票
・社会保険や生命保険の控除の証明書(年末に自宅に届くことが多い)
・マイナンバーカード

その他退職後にやる事⑤ 確定拠出年金の切り替え

確定拠出年金(企業型DC)に入っていた方は、退職するとその企業で積立ができなくなり、切り替えが必要になります。

確定拠出年金とは?

毎月1~2万円を老後の資金として、個人で積み立てていく年金制度で、多くの企業で導入されています。

運用されて元本が増えたり、掛け金が所得控除されるなど、節税のメリットもあります。

企業型と個人型(iDeCo)の二つに分けられ、会社員の方は企業型に入っていることが多いです。

切り替えを忘れると、本来増えていく資産が減ったり、60歳以降の年金受け取りができなくなるので、注意しましょう。

やるべきことは、以下どちらかで変わります。

  1. 転職先に確定拠出年金の制度がある
  2. 転職先に制度がない、公務員・無職・フリーランスになる

ケース1. 転職先に確定拠出年金の制度がある

転職先に確定拠出年金の制度がある方は、特別手続きは必要ありません。

転職先にこれまで加入していたことを伝え、会社側で手続きすることで、前の会社で積立ていた金額を移管できます。

やること 転職先に、これまで確定拠出年金に入っていたことを伝える
やる場所 転職先の会社
期限 転職後すみやかに
手続きに必要なもの

ケース2. 転職先に制度がない、公務員・無職・フリーランスになる

転職先に制度がなかったり、公務員・無職・フリーランスになる方は、個人型(iDeCo)に切り替えが必要になります。

手続きとしては、自分で金融機関を選び、WEBから申し込みをするだけです。

退職から一ヶ月以内に、以下のような確定拠出年金の資格喪失の書類が届くので、届き次第、書かれた情報を元に申し込みができます。

確定拠出年金の加入者資格喪失のお知らせ

引用:三菱UFJ信託銀行

金融機関は、手数料の安い「SBI証券」「楽天証券」が人気ですが、「みずほ」「三菱UFJ」など、使っている銀行で申し込める方は、本人確認が楽になるので、そこで入ってもいいでしょう。

やること 個人型(iDeCo)に資産を移管する
やる場所 自分で選んだ金融機関(ネットからも手続き可)
期限 退職の翌月から6ヶ月以内
手続きに必要なもの ・メールアドレス
・本人確認書類(口座を持っている銀行なら不要)
・確定拠出年金 加入者資格喪失手続き完了通知書、もしくは、確定拠出年金の加入者資格喪失のお知らせ(退職の約一ヶ月後に自宅に郵送される)

6ヶ月以上放置すると、損するので注意

確定拠出年金は、退職後に6ヶ月以上放置すると、積み立てていたお金が「国民年金基金連合会」に移されてしまいます。

移ると本来増える資産が一切増えなくなり、手数料がかかってむしろ減っていくことになります。

確定拠出年金を放置するとどうなるか

実際忘れる方が多く、100万人以上が手続きをせずに放置しているデータもあるので、注意しましょう。(参考:NHK「放置年金2,800億円の衝撃」)

5. 退職時によくあるトラブルと対処法

最後に、退職でよくある以下のトラブルと対処法を解説していきます。

  • 引き留めにあって退職できない
  • 退職時に有休消化できないと言われた
  • 未払いの給料・残業代がある

これらを知っておくと、万が一の場合も落ち着いて対応ができます。

5-1. 引き止めにあって退職できない

退職の意思を伝えると、以下のようなことを言われ、引き留めにあって退職が進まない場合があります。

  • 頼りになる存在の君がいないと、会社が成り立たない。
  • 退職してもきっと後悔する。うまくいかない。
  • 待遇を改善するから考え直して欲しい。

しかし、退職は自由にできることが法律で決まっていて、会社側に無理に引き留める権利はありません。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

引用:民法「第六百二十七条

退職の意思が固まっている方は、流されないようにしましょう。

どうしても聞き入れてもらえない場合は、上司のさらに上の人や、法律に詳しい人事や労務の担当にかけ合ってみましょう。

人手不足の会社が多く、辞めることに強く責任を感じる方もいますが、「人員を揃えるのは会社の責任」と割り切りましょう。

欠員が出ることも見越して採用したり、退職者が出にくい職場を作るのは会社の責任で、あなたが背負う必要は全くありません。

強い引き留めにあわないために意識すべきこと

退職を伝える際は、以下を意識しておくと、引き留めにあいにくいです。

意識すべきこと 効果
理由を引越しや家族の病気など、個人的事情にする 会社側にはどうしようもなく、「仕方ない」となりやすい
次の仕事の内定が出ていることを伝える 内定先の事情を理由に、「〇日までには辞めたい」とはっきり言いやすい
就業規則のルール通りに伝える
(例:2ヶ月前には退職願を出すルールがあれば、その通り動く)
規則を理由に引き延ばされることがなくなる
引き継ぎを完璧にできることを伝える 退職でかける迷惑を最小限にできるアピールになる
退職は、繁忙期をなるべく避ける 「せめて◯月までは残って」といった引き伸ばしの提案をされにくくなる

これから伝える方は、これらを意識して進めましょう。

5-2. 退職時に有給消化できないと言われた

有休が残っている方は、退職前に消化して辞めることが一般的ですが、それを認められないケースがあります。

しかし、法律上は会社に退職時の有給休暇を拒否する権利はありません。

会社は社員に対して、「この時期は人が足りないから、有休の日にちを変えて欲しい」といった時期変更の希望は出せます。

しかし、退職前の消化だと変更できる日が他にありません。

よって、会社は要求をそのまま受け入れるしかありません。(「労働基準法 第三十九条」より)

聞き入れてもらえない場合は、上司のさらに上の人や、法律に詳しい労務の担当、加入している人は労働組合にかけ合ってみましょう。

「労働基準監督署への相談も検討している」といったトーンで相談すれば、解決することが多いはずです。

それでも難しいなら、実際に最寄りの労働基準監督署に相談すれば、会社に指導してもらえる場合もあります。

また、会社によっては有休の買取制度があるので、それを利用する方法もあります。

5-3. 未払いの給料・残業代がある

最後の給料が入らないなど、未払いの給料や残業代があるケースもあります。

この場合は、まず、口頭でなくメールで、以下のように雇い主に未払い分の振り込みを頼みましょう。

〇〇株式会社 社長 〇〇 様

私は令和〇年〇月〇日に退職した〇〇〇〇です。
令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までの賃金、総額〇〇〇〇〇円を、本来の支払日である令和〇年〇月〇日までに支払っていただいていません。
ついては、令和〇年〇月〇日までに、私の銀行口座(〇〇銀行〇〇支店 普通預金〇〇〇〇〇〇)に、上記金額を支払っていただくようお願いいたします。
期日までにお支払いいただけないときは、労働基準監督署に申告いたします。

令和〇年〇月〇日 〇〇〇〇

引用:山梨労働局

確かに頼んだ証拠を残すことが重要で、数百円がかかりますが「内容証明郵便」で出すのもおすすめです。

その後、会社からの振り込みがない場合は、以下のような証拠を持って、最寄りの労働基準監督署に相談しましょう。

  • 振り込みがないことがわかる通帳
  • 給料明細
  • 給料のルールが書かれた雇用契約書など
  • 送信したメールの記録や、内容証明の控え

会社に対して、法令違反について、指導をしてくれることがあります。(参考:厚生労働省

未払い賃金は、本来の支払日から、3年間は請求する権利があります。

参考|退職代行で一気に解決する方法も

ここまで紹介したトラブルは、退職代行というサービスを使えば、一気に解決することができます。

退職代行とは、2~3万円で退職手続きを代行してくれて、会社と直接のやりとりゼロで退職ができるサービスです。

退職代行の仕組み

怖くて退職が言い出せない人も、スムーズに辞められるメリットがあり、近年急速に利用者が増えています。

退職希望を代わりに伝えるのがメインですが、業者によっては以下にも対応していて、全て丸投げすることができます。

  • 退職時の有給休暇の申請
  • 残業代や未払い賃金の請求

退職が言い出せなかったり、トラブルに自力で対処する自信がない方は、退職代行の利用も検討しましょう。

退職代行のおすすめ

20以上のサービスを比較しましたが、要望別に以下がおすすめです。

退職代行サービスは、大きく以下の2パターンに分けられます。

料金 できること
①労働組合と提携した民間企業が運営 20,000~30,000円 退職手続きの代行、有休の申請
②弁護士が運営 30,000~50,000円 上記に加えて、未払い賃金の請求、万が一の損害賠償請求の対応まで

とにかく退職したいだけ、できれば有給も消化して辞めたい、という方は、一つ目の民間の業者で十分です。

ただし、未払い賃金の請求まではできないので、希望する方は、弁護士運営のサービスを使う必要があります。

サービスごとに違うのは、「料金」「退職できなかった場合の返金保証があるか」「実績」で、以下はいずれの面でも優れています。

料金 返金保証 実績
退職代行トリケシ
(民間企業が運営)
25,000円
業界内でも安い!
あり 2万人以上
フォーゲル綜合法律事務所
(弁護士が運営)
55,000円
よくある成功報酬などの追加料金なし!
あり 1万人以上

退職代行は近年急速に普及してきたサービスで、参入する会社も右肩上がりで増えています。

中には法律を理解していなかったり、退職に失敗しても返金しないなど、いい加減な業者も多いので注意しましょう。

上記のように、実際に多くの退職を成功させていて、返金保証もある大手のサービスを使っておきましょう。

まとめ

退職後の健康保険について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

退職すると、その会社の保険証は使えなくなり、退職の翌日から以下のいずれかに入る必要があります。

退職後の健康保険 対象
①次の会社で健康保険に入る 退職の翌日に転職する人
②家族の扶養に入る(家族の勤める会社の保険証を使う) 1日でも無職の期間がある人・無職やフリーランスになる人
③任意継続する(現在の保険証を最長2年まで延長して使う)
④国民健康保険に入る(役所で保険証を作る)

すぐに転職する方は、次の会社の健康保険に入るだけで済みます。

フルタイムで働く家族がいる方は、保険料が無料になるので、扶養に入るのが一番お得です。

最終的に、任意継続か国民健康保険で悩む方が多いですが、以下の基準で安い方を選びましょう。

任意継続の方が安い ・直近の年収が400万円以上
・配偶者や子供など、同じ保険証を持つ家族がいる
・退職後に年収が上がる
国民健康保険の方が安い ・直近の年収が400万円以下
・退職後に年収が下がる

あなたがスムーズに、もれなく退職手続きを終えられることを心より祈っております。

まだ転職先が決まらない人へ

退職にあたり、転職先が決まらない方には、転職エージェントの利用をおすすめします。

転職エージェントは、担当がついて、以下を全て行ってくれる無料の転職サービスです。

  • 転職相談
  • 求人の紹介
  • 書類や面接の選考対策
  • 企業とのやり取りの代行
  • 退職手続きのサポート

大手エージェントは企業との強いパイプがあり、表には出回らない、有名企業の急ぎの採用案件も多数持っていて、登録から1~2週間で内定が決まる場合もあります。

中でもおすすめは以下の大手7社で、サポート対象になる方の年収別におすすめ度をまとめました。

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優良なエージェントでも、担当者に当たり外れがあるので、念の為3つは利用しておきましょう。