退職後に失業保険をもらうには?退職理由別の手続き・金額まとめ
「退職後の失業保険って何?」「いくらもらえるの?」など、退職後の失業保険が気になっていませんか?
失業保険は、退職後の再就職を応援する給付金で、前職の給料の5~8割を3~5ヶ月もらえるケースが多いです。
手続きを間違えると、もらえずに100万円以上損することもあるので、仕組みや注意点は理解しておきましょう。
このページでは、転職エージェントとして1,000人以上の退職をサポートし、自らも4回の退職経験を持つ筆者が、退職後の失業保険について、以下の流れで解説します。
- 退職後の失業保険(失業手当)とは?
- 退職後に失業手当がもらえる人の2つの条件
- 失業手当の金額はいくら?計算シミュレーション付き
- 失業手当をもらうまでの手続きの流れ
- 退職後の失業保険についてよくある質問
- 失業保険以外で、退職後にすべき5つの手続き
このページを読めば、退職後の失業保険とは何で、金額はいつどれくらいもらえるのか、申請にはどうすべきか、までが全てわかり、失業保険で失敗することがなくなるでしょう。
著者:I.J(現役転職エージェント)
1. 退職後の失業保険(失業手当)とは?
失業保険(失業手当)とは、仕事を辞めた人の再就職を支援するための給付金のことです。
知っておくべきポイントを最初にまとめると、以下のとおりです。
もらえる人の条件 | ・働ける状態で、探しているが仕事が見つからない ・雇用保険に入って、過去に一定期間働いていた |
金額 | ・前職の給料の5~8割を3~5ヶ月間もらえることが多い |
もらえる時期 | ・一般的な自己都合の退職だと退職の約3ヶ月後 ・会社の倒産や解雇など、やむを得ない理由だと退職の約1ヶ月後 |
必要な手続き | ・会社から離職票が届き次第、それを持ってハローワークで申請する |
退職理由で、もらえる条件や金額が変わる
失業手当のもらう条件や金額は、あなたの退職が以下3つのどれに当てはまるかで大きく変わります。
退職理由 | 例 |
①自己都合 | ・より良い環境、待遇を求めて ・キャリアアップのため ・人間関係や仕事内容に不満があった ・問題を起こしてクビにされた |
②会社都合 (特定受給資格者) |
・会社の倒産 ・業績悪化や人員整理によるリストラ ・希望退職制度を使った退職 |
③自己都合だが、やむを得ない事情があった (特定理由離職者) |
・派遣切りや契約社員の雇い止め ・両親の介護が必要になり、仕方なく退職した ・急な転勤などで通勤が難しくなった |
- ②③の細かい条件は「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」に記載あり
一つ目の自己都合退職の方が最も多いですが、この場合は、もらえる時期がやや短くなります。
その他の理由の方が、やむを得ない状況が考慮され、条件や金額の面では、優遇されています。
自分がどの退職かを確認した上で、次から紹介する、具体的な条件や金額をチェックしていきましょう。
2. 退職後に失業手当がもらえる人の2つの条件
以下両方に当てはまる人は、失業手当をもらうことができます。
- 失業の状態にある
- 雇用保険に入って一定期間働いていた
条件1.失業の状態にある
一つ目の条件は、失業の状態にあることで、以下全てを満たす人のことを言います。
- 働ける状態にある
- 仕事を探している
- しかし、まだ決まらず仕事についていない
以下のように、無職でも働ける状態になかったり、働く意思がない人は対象外となります。
- ×病気や怪我ですぐに働けない
- ×妊娠・出産・育児・介護ですぐに働けない
- ×定年退職をして、しばらく休むつもり
条件2. 雇用保険に入って一定期間働いていた
次に、雇用保険に入って働いていた期間が、以下の通りあることが条件となります。
自己都合退職の場合 | 過去2年間に12ヶ月以上 |
会社都合、やむを得ない事情でやめた場合 | 過去1年間に6ヶ月以上 |
期間の合計が条件を満たせばいいので、以下のようにブランクがあっても、対象になります。
※ブランクが1年以上の場合は合算不可
3. 失業手当の金額はいくら?計算シミュレーション付き
失業手当は、以下のように、前職の給料の5~8割を3~5ヶ月もらえるケースが多いです。
〜30歳・前職の月給30万円 ・5年勤めた会社を自己都合で退職の場合〜
・1ヶ月あたりの金額:169,000円
・もらえる期間:3ヶ月
・もらえる総額:543,200円
失業手当の金額は、「1日あたりの金額×何日間もらえるか」で決まります。
具体的にもらえる額は、以下2つを調べるとわかります。
- 1日あたりの金額(基本手当日額)
- 何日間もらえるか(給付日数)
それぞれ計算方法を解説していきます。
3-1. 一日あたりの金額の計算方法
1日当たりの金額を出すには、まずを以下を計算します。
- 賃金日額(前職での過去6ヶ月間の月給の合計÷180)
その結果を、以下の表に当てはめると、年齢、賃金別の金額目安がわかります。
退職時の年齢 | 賃金日額 | 給付率 | 1日当たりの金額 (基本手当日額) |
29歳以下 | 2,746円以上 5,110円未満 |
80% | 2,196円 ~4,087円 |
5,110円以上 12,580円以下 |
50~80% | 4,088円 ~6,290円 |
|
12,580円超 13,890円以下 |
50% | 6,290円 ~6,945円 |
|
13,890円〜 | – | 6,945円(上限) | |
30~44歳 | 2,746円以上 5,110円未満 |
80% | 2,196円 ~4,087円 |
5,110円以上 12,580円以下 |
50~80% | 4,088円 ~6,290円 |
|
12,580円超 15,430円以下 |
50% | 6,290円 ~7,715円 |
|
15,430円〜 | – | 7,715円(上限) | |
45~59歳 | 2,746円以上 5,110円未満 |
80% | 2,196円 ~4,087円 |
5,110円以上 12,580円以下 |
50~80% | 4,088円 ~6,290円 |
|
12,580円超 16,980円以下 |
50% | 6,290円 ~8,490円 |
|
16,980円〜 | – | 8,490円(上限) | |
60~64歳 | 2,746円以上 5,110円未満 |
80% | 2,196円 ~4,087円 |
5,110円以上 11,300円以下 |
50~80% | 4,088円 ~5,085円 |
|
11,300円超 16,210円以下 |
50% | 5,085円 ~7,294円 |
|
16,210円〜 | – | 7,294円(上限) |
参考:厚生労働省「雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ」
賃金日額が大きいほど、失業保険の金額も高くなりますが、表の通り年齢ごとに上限があります。
そのため、月給が50万円を超えるようなケースだと、もらえる金額に差はつかなくなります。
3-2. もらえる期間はどう決まるか
もらえる期間は、退職理由が自己都合の場合は、以下の表の通りとなります。
雇用保険に入って働いていた期間 | もらえる日数 |
1年以上10年未満 | 90日 |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
その他、会社都合や、やむを得ない事情でやめた方は、以下の表の通りとなります。
雇用保険に入って働いていた期間 | 退職時の年齢 | ||||
30歳未満 | 30歳以上 35歳未満 |
35歳以上 45歳未満 |
45歳以上 60歳未満 |
60歳以上 65歳未満 |
|
1年未満 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 | 90日 |
1年以上 5年未満 |
90日 | 120日 | 150日 | 180日 | 150日 |
5年以上 10年未満 |
120日 | 180日 | 180日 | 240日 | 180日 |
10年以上 20年未満 |
180日 | 210日 | 240日 | 270日 | 210日 |
20年以上 | – | 240日 | 270日 | 330日 | 240日 |
参考:ハローワーク「基本手当の所定給付日数」
3-3. もらえる金額・期間のシミュレーション
ここまでの計算方法を踏まえ、以下3つのパターンで、もらえる金額をシミュレーションしました。
- 月給30万円 30歳 5年勤めた会社を退職
- 月給50万円 40歳 15年勤めた会社を退職
- 月給60万円 50歳 25年勤めた会社を退職
月給30万円 30歳 5年勤めた会社を退職
自己都合退職 | 会社都合、その他やむを得ない事情での退職 | |
1ヶ月当たりの金額 | 169,000円 | 169,000円 |
もらえる期間 | 90日 | 180日 |
もらえる総額 | 543,200円 | 1,086,400円 |
月給50万円 40歳 15年勤めた会社を退職
自己都合退職 | 会社都合、その他やむを得ない事情での退職 | |
1ヶ月当たりの金額 | 216,000円 | 216,000円 |
もらえる期間 | 120日 | 240日 |
もらえる総額 | 925,800円 | 1,851,600円 |
月給60万円 50歳 25年勤めた会社を退職
自己都合退職 | 会社都合、その他やむを得ない事情での退職 | |
1ヶ月当たりの金額 | 237,700円 | 237,700円 |
もらえる期間 | 150日 | 330日 |
もらえる総額 | 1,273,500円 | 2,801,700円 |
もっと具体的に知りたい人へ
dodaの「【シミュレーション】失業手当(失業保険)の給付額はいくら?計算方法は?」に条件を入れて計算してみましょう。
直近の収入や年齢、被保険者期間、退職理由を入れると、それに応じた金額目安がわかります。
「いつからもらえるか」は退職理由で変わる
失業保険の最初の振り込み時期は、退職理由によって以下のようになります。
- 自己都合退職:約3ヶ月後
- 会社都合・やむを得ない事情での退職:約1ヶ月後
自己都合だと、手続きしてからもらえるまでに2ヶ月の待機期間が余分にあり、もらえる時期は遅くなります。
3ヶ月間、無収入でもやっていく貯金がない方は、早く転職を決めてしまった方がいいでしょう。
早く就職を決めると、前倒しで一気にもらえる制度あり
失業保険は、全て受け取る前に就職を決めると、本来もらえる額の6~7割が前倒しでもらうこともできます。
「再就職手当」というもので、受給する残りの日数がどれだけあるかによって、以下の金額がもらえます。
- 残日数が3分の2以上ある:貰いきっていない金額の7割
- 残日数が3分の1以上ある:貰いきっていない金額の6割
例えば、以下のケースで考えてみましょう。
〜30歳・前職の月給30万円 ・5年勤めた会社を自己都合で退職の場合〜
・1ヶ月あたりの金額:169,000円
・もらえる期間:90日
・もらえる総額:543,200円
・失業保険申し込みから1ヶ月後、受け取り前に就職決定
この方は自己都合退職のため、振り込みまで申し込みから約3ヶ月かかります。
ただし、この失業保険を受け取る前の期間に就職を決めると、総額の7割(543,200×0.7=380,250円)がもらえます。
しかも、失業手当のように月一の振り込みでなく、総額が一気に受け取れます。
就職のお祝い金のようなもので、早期の就職を応援する意味でこうした制度が用意されています。
転職先の収入と合わせると、この方法が最もお得なので、「doda」のような転職エージェントに登録するなどして、なるべく早期の転職決定を目指すのがおすすめです。
細かい受給の条件は以下のページで確認できます。
- ハローワーク「再就職手当のご案内」
4. 失業手当をもらうまでの手続きの流れ
次に、失業手当がもらえるまでの以下の流れを解説していきます。
- 退職後に会社から離職票をもらう
- ハローワークで申し込み
- 7日間の待機期間 (自己都合退職ならさらに2ヶ月の給付制限)
- ハローワークの説明会に参加
- ハローワークで失業認定を受ける
↓約1週間後 - 失業手当の振込
ステップ1. 会社から離職票を受け取り
まずは、退職した会社から以下の離職票をもらいましょう。
頼まないと出してもらえない場合があるので、必要な方は会社に発行を頼んでおきましょう。
会社側がハローワークにあなたの退職を届け出ることで、会社宛に発行されます。
会社からあなたに書類が渡るのはその後になるので、もらえるまでには退職から10日前後かかります。
ステップ2. ハローワークで申し込み
次に、以下を持って、ハローワークに失業保険の申請に行きましょう。
・離職票
・マイナンバーがわかるもの(マイナンバーカード、通知カード、番号記載の住民票)
・本人確認書類(免許証やマイナンバーカード)
・縦3cm×横2.4cmの証明写真2枚
・本人名義の通帳又はキャッシュカード
場所は、住所地の管轄のハローワークで、「全国のハローワークの所在案内」から確認できます。
ハローワークは、平日の8:30~17:15に開庁していて、申請手続きには16時までには行くようにしましょう。
ステップ3. 7日間の待機期間を過ごす
申請後は、仕事をしていない状態を確認する目的で、7日間の待機期間が設けられています。
アルバイトなど、少しでも働くと延長になってしまうので、早くもらいたい方は、この期間は働かないようにしましょう。
自己都合退職の場合は、さらに2ヶ月の給付制限があり、この期間は受給が受けられません。(過去5年で3回目の申請の人は3ヶ月)
ステップ4. ハローワークの説明会に参加
次に、ハローワークで失業保険のルールについての説明会が開かれるので、参加しましょう。
ここで、次のステップで必要になる「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」の二つが受け取れます。
ステップ5. ハローワークで失業認定を受ける
説明会でもらった書類を持って、決められた日にちにハローワークで失業認定を受けます。
失業認定とは、働きたくても働けない「失業」の状態にあるのを確認することです。
無職であるだけでなく、以下のような就職活動の実績の報告も必要になります。
実績として報告できる就職活動の例 (認定一回につき2件以上必要) |
・ハローワークで職業相談をする ・ハローワークや、民間企業が実施する就職に関するセミナーに参加する ・民間の転職フェアに参加して企業にエントリー ・就職に必要な国家試験や検定を受験する ・求人に応募する(不採用や内定辞退でも1カウント) |
ステップ6. 失業手当が振り込まれる
失業認定から約1週間後、口座に1ヶ月分の失業手当が振り込まれます。
その後、「⑤ハローワークで失業認定を受ける」→「⑥失業手当が振り込まれる」を一ヶ月ごとに繰り返していきます。
5. 退職後の失業保険についてよくある質問
次に、失業保険についてよくある以下の質問に回答していきます。
- 定年退職後に失業保険はもらえますか?
- うつ病で退職後に失業保険はもらえますか?
- 育休明けの退職でも失業保険はもらえますか?
- 失業保険の受給中にアルバイトはできますか?
Q1. 定年退職後に失業保険はもらえますか?
64歳までの方なら、同じ条件で失業保険がもらえます。
65歳以上で定年退職する方は、以下両方を満たせば「高年齢求職者給付金」という別の手当がもらえます。
- 失業の状態にある
- 直近1年間に6ヶ月以上雇用保険に入って働いていた
同じ条件で退職した場合の年齢別の金額の違いをまとめると以下の通りです。
直近6ヶ月の月給50万円、10年勤めた会社を定年退職 | ||
退職時の年齢 | もらえる給付金 | もらえる総額 |
64歳 | 失業保険(失業手当) | 656,400円(90日分) |
65歳〜 | 高年齢求職者給付金 | 347,200円(50日分) |
65歳以上だと、もらえる日数が多くても50日になり、総額が失業保険よりも少なくなります。
ただ、高年齢求職者給付金は、月一で振込の失業保険と違い、一括で総額が振込されます。
Q2. うつ病で退職後に失業保険はもらえますか?
うつ病でも、すぐに転職して働ける状態の方であれば、同じく失業保険がもらえます。
働くことができない状態だと、対象にはならないので、以下どちらかの給付金を申請することになります。
うつ病で働ける状態かを最初にはっきりさせる必要があり、それを証明する医師の診断書が必要となります。
診断書があれば、失業保険をもらう場合も「やむを得ない理由の退職」として、もらえる時期が早まったり、受給期間を増やすことが可能になります。
まずは医師の診断を受けた上で、必要な給付金の申請をしていきましょう。
Q3. 育休明けの退職でも失業保険はもらえますか?
以下の条件を満たす方なら、一般の退職者と同じように失業保険がもらえます。
- 失業の状態にある
- 雇用保険に入って一定期間働いていた
育休明けの退職後も、育児などですぐには働ける状態ではない方は、受給期間の延長をハローワークに申請しておきましょう。
失業保険を申請して受け取れるのは、原則退職から1年以内ですが、その期間を4年まで延ばすことができます。
延長すれば、退職後4年以内に、働けるようになったタイミングから、失業手当の申請・受け取りができるようになります。
参考:厚生労働省「求職者給付に関するQ&A」
Q4. 失業保険の受給中にアルバイトはできますか?
申請後の、7日の待機期間中はできませんが、以下の条件なら受給しながらすることが可能です。
- 週20時間以内
- 31日以上の雇用の見通しがない
ただ、一日4時間以上働くと、その日の分の失業手当は先送りになり、4時間未満でも収入次第で減額になるなど、満額もらえなくなるケースが多いです。
※参考:西神公共職業安定所「基本手当受給中のパート、アルバイトについて」
また、最初の説明会で話がありますが、受給中にアルバイトをする際は、必ずハローワークに申告しましょう。
黙って働くと、不正受給としてペナルティとして受給額の3倍を請求されたり、罰則が大きいので注意しましょう。
6. 失業保険以外で、退職後にやるべき5つの手続き
次に、失業保険以外で、退職後にすべき以下の公的手続きを紹介していきます。
退職後にすべき手続き | 対象 | やるべき時期 |
1.健康保険の切り替え | 退職の翌日に転職 | 手続きなし |
1日でも無職の期間あり (任意継続する) |
退職翌日から20日以内 | |
1日でも無職の期間あり (国保に加入する) |
退職翌日から14日以内 | |
1日でも無職の期間あり (家族の扶養に入る) |
退職翌日から5日以内 | |
2.年金の切り替え | 退職の翌日・同じ月内に転職 | 手続きなし |
上記以外 (役所で国民年金に加入) |
退職翌日から14日以内 | |
3.住民税の手続き | 1ヶ月以内に転職 (転職先に給与所得者異動届出書を提出) |
転職時 |
上記以外 (自分で住民税の支払い) |
役所から納付書が届いたら | |
4.所得税の手続き | 退職した年内に転職 (転職先に源泉徴収票を提出) |
転職時 |
上記以外 (自分で確定申告) |
退職の翌年の2~3月 | |
5.確定拠出年金の手続き ※加入中の方のみ |
転職先に確定拠出年金あり | 手続きなし |
上記以外 (iDeCoに申し込み) |
退職の翌月から6ヶ月以内 |
同じ項目でも、退職時期や転職の有無によって、やるべき内容は変わります。
具体的にやるべき内容を、それぞれ、状況別に解説していきます。
退職後にやる事① 健康保険の切り替え
退職すると、会社からもらっている保険証は返却になり、新しい保険証に切り替えが必要になります。
手続きを忘れると、病院代が3倍になったり、高額の保険料を一気に請求されるケースもあるので注意しましょう。
やるべきことは、以下どちらかで変わります。
- 退職日の翌日に転職する
- 1日でも無職の期間がある、フリーランスになる
ケース1. 退職日の翌日に転職する
「3月31日退職→4月1日入社」のように、退職の翌日に転職する場合は、特別手続きは必要ありません。
退職する会社に保険証を返却し、転職先で新しい保険証を受け取るだけです。
新しい保険証は、入社から1~3週間で会社から受け取れます。
やること | 保険証を会社に返却 |
やる場所 | 退職する会社 |
期限 | 退職日までに |
必要なもの | 保険証 |
ケース2. 1日でも無職の期間がある、フリーランスになる
「3月15日退職→3月20日入社」のように、1日でも無職の期間がある方や、フリーランスになる方は、以下いずれかの手続きが必要です。
- 任意継続に加入:退職した会社の保険証を最大2年まで使える
- 国民健康保険に加入:住所地の役所で保険証をもらう
- 家族の扶養に入る:家族が働く会社の保険証をもらう
3つの中から、保険料が安くなる方法を選びましょう。
以下に当てはまる方は、自分の保険料が掛からなくなるので、家族の扶養に入るのが一番お得です。
- 配偶者や親、子など家族がフルタイムで働いている
- あなたの退職後の見込み年収が130万円以下
- あなたの退職後の見込み年収が、働いている家族(配偶者や親など)の半分以下
その他の方は、任意継続か国民健康保険の二択ですが、どちらが安いかは、収入や家族の有無によって変わるので、一概には言えません。
ただ、以下に当てはまる方は、任意継続の方が安くなる傾向です。
- 直近の年収が400万円以上
→任意継続の保険料は上限があり、年収400万円までの場合で計算されることが多い - 退職後に年収が上がる
→2年間は退職時の収入を基準にした保険料で変わらない - 配偶者や子供など、同じ保険証を使う扶養家族がいる
→あなた一人が保険料を払えば、家族の分は無料になる
直近の年収が300万円前後だったり、年収が下がる方は、国民健康保険に加入をした方が負担は減ることが多いです。
具体的に確認したい方は、以下ぞれぞれに電話して、直近の収入や家族構成を伝えれば概算を教えてもらえます。
- 任意継続の保険料:健康保険組合(保険証の保険者の欄に記載あり)の窓口
- 国民健康保険の保険料:住所のある役所の、国民健康保険の窓口
任意継続に加入する手続き
前職で2ヶ月以上勤めた方だと、任意継続に加入して、同じ保険証を、退職後も最大2年まで使うことができます。
必要書類に記入して、健康保険組合に郵送すると、保険証を自宅まで送ってもらえます。
ネットで「保険者名、任意継続」で検索すると、公式サイトから以下のような申請書がダウンロードできます。(保険者名は保険証に記載)
引用:三菱健康保険組合
やること | 任意継続保険の加入手続き |
やる場所 | 加入していた健康保険組合の事務所 ※郵送も可 |
期限 | 退職の翌日から20日以内 |
必要なもの | 健康保険任意継続被保険者資格取得申請書 |
手続きの期限(20日)を過ぎてしまったら?
期限を過ぎた場合、加入は受け付けてもらえないので、次で紹介する国民健康保険への加入を行いましょう。
国民健康保険に加入
国民健康保険に入る場合は、住所のある役所で、加入の手続きが必要です。
手続きは、本人だけでなく、配偶者など同一世帯の方でも可能です。
その他の方に代理で手続きを頼みたい方は、「住んでいる市区町村名、国保」で検索すると、公式ページが出て、委任状がダウンロードできるので、活用しましょう。
やること | 国民健康保険の加入手続き |
やる場所 | 役所の国保年金課 |
期限 | 退職の翌日から14日以内 |
必要なもの | ・退職日のわかる書類(健康保険の資格喪失証明書、退職証明書) ・本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなど) |
手続きの期限(14日)を過ぎてしまったら?
過ぎても加入の手続きはできますが、退職日以降の保険料は、さかのぼって一気に請求されます。
また、手続きをしていない期間の病院代は、全額自己負担(通常の約3倍)となります。
家族の扶養に入る
以下両方を満たす方は、家族の扶養に入り、家族の会社の保険証に切り替えましょう。
- 退職後の見込み年収が130万円以下
- 年収が、働いている家族(配偶者や親など)の半分以下
上記の場合は、あなたの保険料の支払いがなくなるので、扶養に入るのが一番お得です。
ネットで「保険者名、扶養」で検索すると、以下のような必要書類のダウンロードが可能で、細かい条件も確認ができます。(保険者名は保険証に記載)
引用:三菱健康保険組合
やること | 家族が、あなたを自分の健康保険に加入させる |
やる場所 | 家族の勤める会社の人事部など、健康保険の窓口 |
期限 | 退職の翌日から5日以内 |
必要なもの | ・健康保険被扶養者異動届 ・退職証明書 ※健康保険組合によって異なるので、公式ページを要確認。 |
手続きの期限(5日)を過ぎてしまったら?
過ぎても加入はできますが、退職の翌日から扶養に入ることはできなくなり、申請が受理された日からの扶養となります。
事情によっては、遅れても退職の翌日から加入させてくれる場合もあるので、一度健康保険組合に相談してみましょう。
退職後にやる事② 年金の切り替え
退職すると、勤めていた会社の厚生年金は切替が必要になります。
手続きを忘れると、将来もらえる年金額が減ったり、支給されなくなる場合もあるので注意しましょう。
やるべきことは、以下どちらかで変わります。
- 退職の翌日や、同じ月内に転職する
- 月をまたいで転職する、無職・フリーランスになる
ケース1. 退職の翌日や、同じ月内に転職する
退職の翌日に転職したり、「3月15日退職→3月20日入社」のように退職した月内に転職する方は、特別手続きは必要ありません。
転職先の会社に、基礎年金番号かマイナンバーを伝えるだけで、現在の厚生年金が引き継がれます。
やること | 転職先に、基礎年金番号、もしくはマイナンバーを伝える |
やる場所 | 転職先の会社 |
期限 | 転職後すみやかに |
必要なもの | 以下いずれか一つ ・基礎年金番号のわかるもの(年金手帳か基礎年金番号通知書) ・マイナンバーのわかるもの(マイナンバーカードかマイナンバーの通知書) |
ケース2. 月をまたいで転職する、無職・フリーランスになる
「3月15日退職→4月1日入社」のように月をまたぐ転職や、無職・フリーランスになる方は、国民年金に切り替えが必要です。
住所のある役所で、退職から2週間以内に手続きをしましょう。
やること | 国民年金に加入する |
やる場所 | 役所の国保年金課 |
期限 | 退職日の翌日~14日以内 |
必要なもの | ・年金手帳、または基礎年金番号通知書 ・退職日のわかる書類(健康保険の資格喪失証明書、退職証明書) ・本人確認書類(免許証やマイナンバーカードなど) |
手続きの期限(14日)を過ぎてしまったら?
年金事務所から保険料の納付をするよう「催告状」が届いたり、電話で案内が来るはずなので、それに従いましょう。
国民年金の保険料は、期限から2年までなら、さかのぼって納付ができるので、すぐに対応すれば問題ありません。
退職後にやる事③ 住民税の手続き
退職すると、その会社の給与から住民税の天引きができなくなります。
そのため、天引きする会社の切り替えや、自分での支払い手続きが必要になります。
手続きを忘れると、税金が未納なり、ペナルティで税金を多く取られることもあるので注意しましょう。
やるべきことは、以下どちらかで変わります。
- 退職から1ヶ月以内に転職する
- 1ヶ月以上の無職の期間がある、フリーランスになる
ケース1. 退職から1ヶ月以内に転職する
退職後、すぐに転職される方は、住民税の天引きをそのまま次の会社で受けることができます。
やることは簡単で、以下の「給与所得者異動届出書」を退職する会社に用意してもらい、それを転職先に提出すれば終わりです。
引用:中央区公式ページ
退職の翌月10日までという期限があるので、退職する会社に、早めに用意を頼んでおきましょう。
やること | 退職前の会社に「給与所得者異動届出書」を書いてもらい、それを転職先に提出 |
やる場所 | 会社 |
期限 | 退職の翌月10日まで |
手続きに必要なもの | 給与所得者異動届出書(退職する会社が用意してくれる) |
ケース2. 1ヶ月以上の無職の期間がある、フリーランスになる
1ヶ月以上無職の期間があったり、フリーランスになる方は、退職後の住民税は自分で支払いが必要になります。
やること自体は変わりませんが、以下どちらになるかで、支払いのタイミングが変わります。
- 1~5月に退職
- 6~12月に退職
1~5月に退職する場合
1~5月の退職の場合、5月分までの住民税は、最後の給与から一気に天引きされます。
そして6月分から、役所から届く納付書を使って、自分で支払いが必要になります。
やること | 住民税の支払い |
やる場所 | 最寄りの金融機関やコンビニ |
期限 | 納付書に書かれた期日まで(6月、8月、10月、翌年1月の末) |
手続きに必要なもの | 住民税の納付書(6月に役所から届く) |
6~12月に退職する場合
6~12月の退職の場合、退職の翌月以降の住民税は、自分で支払いが必要になります。
退職後まもなく、役所から納付書が届くので、期限までに支払いましょう。
やること | 住民税の支払い |
やる場所 | 最寄りの金融機関やコンビニ |
期限 | 納付書に書かれた期日まで |
手続きに必要なもの | 住民税の納付書(退職からまもなく役所から届く) |
退職後にやる事④ 所得税の手続き
退職すると、その会社の給与から所得税の天引きができなくなります。
そのため、天引きする会社の切り替えや、確定申告の手続きが必要になります。
手続きを忘れると、税金が未納なり、ペナルティで税金を多く取られることもあるので注意しましょう。
やるべきことは、以下どちらかで変わります。
- 退職と同じ年に転職する
- 退職した年に転職しない、無職・フリーランスになる
ケース1. 退職と同じ年に転職する
退職したのと同じ年に転職する場合は、引き続き転職先で所得税の天引きをしてくれます。
やることは、退職した会社から以下の「源泉徴収票」を受け取り、それを転職先に渡すだけです。
引用:国税庁公式
ただ、年内の転職でも、11~12月の転職先の年末調整に間に合わなかった方は、次から紹介する確定申告の手続きが必要です。
※年末調整:会社が年間に天引きした所得税を、厳密に計算し直して、過不足を調整する手続き。
やること | 前職の源泉徴収票を転職先に提出 |
やる場所 | 転職先の会社 |
期限 | 退職した年内 |
手続きに必要なもの | 源泉徴収票(退職した会社から退職後1ヶ月ほどで郵送される) |
ケース2. 退職した年に転職しない、無職・フリーランスになる
退職した年内に転職しない方や、無職・フリーランスになる方は、自分で確定申告の手続きが必要です。
確定申告とは、1~12月までにいくら稼いだのかを税務署に報告し、所得税を計算して、納税までを行う手続きです。
国税庁の専用ページから、収入や控除の金額を入れて自宅で手続きができます。
引用:国税庁「確定申告書等作成コーナー」
マイナンバーカードがあると、ネットでデータを送信できて楽なので、まだ持っていない人は作っておきましょう。
やること | 確定申告 |
やる場所 | 自宅、もしくは税務署 |
期限 | 退職の翌年の2/16~3/15の間 |
手続きに必要なもの | ・退職した会社の源泉徴収票 ・社会保険や生命保険の控除の証明書(年末に自宅に届くことが多い) ・マイナンバーカード |
退職後にやる事⑤ 確定拠出年金の切り替え
確定拠出年金(企業型DC)に入っていた方は、退職するとその企業で積立ができなくなり、切り替えが必要になります。
確定拠出年金とは?
毎月1~2万円を老後の資金として、個人で積み立てていく年金制度で、多くの企業で導入されています。
運用されて元本が増えたり、掛け金が所得控除されるなど、節税のメリットもあります。
企業型と個人型(iDeCo)の二つに分けられ、会社員の方は企業型に入っていることが多いです。
切り替えを忘れると、本来増えていく資産が減ったり、60歳以降の年金受け取りができなくなるので、注意しましょう。
やるべきことは、以下どちらかで変わります。
- 転職先に確定拠出年金の制度がある
- 転職先に制度がない、公務員・無職・フリーランスになる
ケース1. 転職先に確定拠出年金の制度がある
転職先に確定拠出年金の制度がある方は、特別手続きは必要ありません。
転職先にこれまで加入していたことを伝え、会社側で手続きすることで、前の会社で積立ていた金額を移管できます。
やること | 転職先に、これまで確定拠出年金に入っていたことを伝える |
やる場所 | 転職先の会社 |
期限 | 転職後すみやかに |
手続きに必要なもの | – |
ケース2. 転職先に制度がない、公務員・無職・フリーランスになる
転職先に制度がなかったり、公務員・無職・フリーランスになる方は、個人型(iDeCo)に切り替えが必要になります。
手続きとしては、自分で金融機関を選び、WEBから申し込みをするだけです。
退職から一ヶ月以内に、以下のような確定拠出年金の資格喪失の書類が届くので、届き次第、書かれた情報を元に申し込みができます。
引用:三菱UFJ信託銀行
金融機関は、手数料の安い「SBI証券」「楽天証券」が人気ですが、「みずほ」「三菱UFJ」など、使っている銀行で申し込める方は、本人確認が楽になるので、そこで入ってもいいでしょう。
やること | 個人型(iDeCo)に資産を移管する |
やる場所 | 自分で選んだ金融機関(ネットからも手続き可) |
期限 | 退職の翌月から6ヶ月以内 |
手続きに必要なもの | ・メールアドレス ・本人確認書類(口座を持っている銀行なら不要) ・確定拠出年金 加入者資格喪失手続き完了通知書、もしくは、確定拠出年金の加入者資格喪失のお知らせ(退職の約一ヶ月後に自宅に郵送される) |
6ヶ月以上放置すると、損するので注意
確定拠出年金は、退職後に6ヶ月以上放置すると、積み立てていたお金が「国民年金基金連合会」に移されてしまいます。
移ると本来増える資産が一切増えなくなり、手数料がかかってむしろ減っていくことになります。
実際忘れる方が多く、100万人以上が手続きをせずに放置しているデータもあるので、注意しましょう。(参考:NHK「放置年金2,800億円の衝撃」)
まとめ
退職後の失業保険について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
失業保険は、退職後の再就職を応援する給付金で、要点をまとめると以下の通りです。
もらえる人の条件 | ・働ける状態で、探しているが仕事が見つからない ・雇用保険に入って、過去に一定期間働いていた |
金額 | ・前職の給料の5~8割を3~5ヶ月間もらえることが多い |
もらえる時期 | ・一般的な自己都合の退職だと退職の約3ヶ月後 ・会社の倒産や解雇など、やむを得ない理由だと退職の約1ヶ月後 |
必要な手続き | ・会社から離職票が届き次第、それを持ってハローワークで申請する |
あなたがスムーズに、もれなく退職手続きを終えられることを心より祈っております。
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